あまり英語について語りたくなかったけど、最近の TOEFL 関連のニュースについてはさすがに言及したい気持ちになった。アイディアが現実的でないと思う。

次の二つの記事を読んだ。

国家公務員採試験に採り入れる件の方は確定、大学入試/卒業の要件に加える件については未定のようだ。

TOEFL を国家公務員試験に採り入れるのは筋が悪い

TOEFL という名前は Test of English as a Foreign Language から来ている。ただし、これは英語力一般を問う試験ではない。主に英語圏の高等教育機関へ入学する際に、「自分は英語環境で教育を問題なく受けることができる」ということを示すための試験である。

試験内容も、教育機関での実践を想定したようなものが多い。例えば:

  • 大学の講義を聞き、60秒で概要を話す
  • 大学の講義資料を数分読み、講師による解説を聞く。その後で講義資料と講師の主張を300語程度で書く

などである。

このような能力が公務員に必要なのか、大いに疑問である。

大学入試/卒業の要件としての TOEFL はスコアを慎重に検討するべき

それでは、大学入試/卒業の要件にするという案はどうだろう。そのこと自体は問題ないと思う。ただし、要求しているスコアがおかしい。前記の朝日新聞のニュースでは TOEFL と TOEIC の換算表が掲載されている。これが誤解の元なのだろう。

この換算表の作成元の海外進学センターが何を根拠にこの換算表を作成したのか分からないが、たかだか TOEIC 880点程度で TOEFL iBT で 100点を取るのはかなり難しいだろう。僕自身、 TOEIC 910点を取った後に受けた TOEFL iBT では 87点しか取れなかった。僕の友だちも似たようなスコアである。

そもそも TOEFL と TOEIC では必要とされる語彙がかなり異なるし、安易に TOEIC のスコアを基準にして TOEFL の目標値を設定してはならないだろう。

大学については、「約30校の卒業要件をTOEFL90点相当にし、集中的支援でグローバル人材を年10万人養成する」ともしている。

率直に言って、これでは9割方の学生は卒業できないのではないかと思う。

TOEFL 以外の英語試験について

前述のように TOEFL はアカデミックな英語に関する試験である。TOEIC はより一般的な英語力を問う試験ではあるけれど、受験者の大多数が日本人や韓国人であり、グローバルに受け入れられている試験であるとは言いづらい。

最近は IELTS という試験が急速に人気を獲得している。IELTS は「アカデミック・モジュール」と「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の二種類が存在し、前者はアカデミックな英語力を評価するためのもので、後者は一般的な英語力を評価するためのものである。今では北米の大学入試は「TOEFL ないし IELTS アカデミック・モジュール」で英語力を判断するところがほとんどである。また、カナダなどの地域では永住権申請の際に IELTS ジェネラル・トレーニング・モジュールのスコアが必要になることがある。

TOEFL は単なる選択肢でしかないし、他に優れた英語試験は IELTS を含めていくらでもある。

まとめ

  • TOEFL を国家公務員採試験に採り入れる件は撤回した方がいい
  • 大学入試/卒業の要件に外部の英語試験を組み込みたいのであれば、学生に求める現実的な英語力を丁寧に検討した方がいい。TOEFL 以外の選択肢も検討できれば尚いい