「Learn or Die」を読んだ。副題は「死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦」である。だいぶ主張の強いタイトルだ。
本書はプリファードネットワークス (以下 PFN と書く) の共同創業者二人が書いた本である。Startup DB の記事によれば PFN は日本のユニコーンの中でも最も時価総額が高く、かつ二位とはダブルスコア以上の差をつけている。広く業界からリスペクトを集めている企業だ。僕も PFN には注目している。
実は過去の職場で PFN の前進である PFI 出身の方と一緒に働いた経験があり、PFN も順風満帆であったわけではないという話は聞いていた。本書では「創業者同士で借金をしながら従業員の給与を払った」という過去のエピソードも紹介されている。輝かしい企業の生々しい苦労話を読むのは楽しい。こういう読書経験を通してこそ、自分自信の苦労も肥やしにする力がつくように思う。
著者らの Nerd な一面 (“一面” というより、こちらの方が本質なのかもしれない) を垣間見えるのもよい。著者の西川徹さんが中高生の頃に教室にパソコンを持ち込み、プログラミングをしながら授業を聞いていた話などは、率直に「羨ましい」と思った。西川さんは筑波大学附属駒場の中高一貫校のご出身らしく、その環境を「自由な校風」と表現している。僕が卒業した小・中学校にはそのような自由はなかった。せめて自分の子どもにはなるべく自由な世界で過ごしてもらいたいと思った。
ところで、つっこみたくなったのは Epilogue の次の一節である。
これからの5年、10年くらいで人間はコードを書かなくなるだろう。本編でも書いたとおり、私たちは、人間がコードを書かなくてもプログラムを組めるようなシステムを作っているということになる。
もしかしたら、そういう日が来るかもしれない。本書の出版は 2020 年なので、著者らは 2025~2030 年くらいに「人間がコードを書かなくなる」時代が来ると考えているのだ。しかし PFN は「小学生から始めるプログラミング教材」を作っている会社でもある。彼らの予想が的中すれば、今の小学生が大人になる頃がまさに「人間がコードを書かなくなる」時代ということになる。本当に 10 年後に人間がコードを書かなくなると思っているなら、このプログラミング教材は何のためのものなのか。ちなみに、僕は 2030 年でも人間はばりばりコードを書いているのではないかと予想している。
そのようなことを思いながら、本書を読んだ。